鋳片の品質向上
モールドは、シェル形成の最も初期の部分に位置しているため、鋳片品質を大きく左右する部分のひとつです。従って、モールド設計の最適化により、多くの操業トラブル解消や鋳片の品質改善に寄与できます。
解析的アプローチにより解決できる課題としては
- ブレークアウトや鋳型損傷等の操業トラブル
- 鋳片割れ等の品質問題
などが挙げられるます。
解決手段・方法
以下に示す各種FEM解析手法の導入及びその応用により、モールドの最適設計を行っています。
※B.O.とは
1)解析の種類(解析機能)
- 伝熱解析、熱流体解析、構造解析、電磁場解析など
2)解析内容
- モールド冷却構造最適化、モールドテーパ最適化、モールド構造最適化、銅板材質条件最適化など
2-1.モールド内面テーパ解析(伝熱解析、構造解析)
(1)最適テーパの算出方法

(2)SLMDの最適テーパ "長・短辺"とものマルチテーパを提案

2-2.モールド冷却構造最適化(伝熱解析、熱流体解析)

2-3.モールド構造解析(伝熱解析、構造解析)

2-4.モールド内溶鋼撹拌解析(熱流体解析、電磁場解析)

3)調査・診断技術
- FEM解析技術とセンシング技術の応用組み合わせにより、既設鋳型の調査・診断用のハードウエア、ソフトウエアの開発にも取り組んでいます
3-1.鋳型内鋳片凝固監視システム
このシステムは鋳型内に設置した熱電対の温度データをもとに、鋳片と鋳型との接触状態を監視・解析・制御することで鋳片品質の改善や高品質鋳片を安定して製造するために役立てるシステムです。(図1)

図1.鋳片凝固監視システム

図1.鋳片凝固監視システム
3-2.鋳型の剛性診断システム
鋳型内凝固シェルの健全化により鋳片表面割れやB.O.が低減。
鋳片品質を大きく左右する鋳型テーパの最適化に際しては、同時に鋳型の剛性を評価することも重要になってきます。鋳型銅板厚みやバックフレームの厚み、また、使用温度条件によっては鋳造中の鋳型熱変形が大きく発生し(図2-a)、これに伴うテーパ崩れにより鋳片品質が低下します(図2-b)。
このような問題に対し、弊社ではFEM解析による鋳型剛性検討に加え、レーザー変位計等各種センサを鋳型に組み込んだ実機鋳型の剛性調査・診断も行っております。そして、これらの結果をもとにした改善設計を設備の改造、更新、新設に適用することにより、鋳造品質の改善効果が得られてきています(図2-c)。


図2.連続鋳造用鋳型のFEM解析シミュレーション例
3-3.ロール反力制御システム
鋳片表面割れ抑制および鋳片形状制御。
鋳片からの反力を監視・制御することで、表面割れを制御し、また鋳片形状を制御します。

図3.ロール反力(鋳片品質・型状)制御システム
B.O.(ブレークアウト)
不均一凝固等の原因により凝固シェルが破断し、内部の溶鋼が漏れ出す現象。